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リバースエンジニアリングと知財問題

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リバースエンジニアリングは技術開発に役立つ一方で、模倣や情報流出につながるリスクもあります。とくに悪意ある解析行為から自社の技術を守るには、法的な視点と契約上の対策が欠かせません

本記事では、リバースエンジニアリングの基本や関連法令・契約による制限・裁判例に基づく判断基準・企業が取るべき予防策について、わかりやすく解説します。

リバースエンジニアリングとは

リバースエンジニアリング(逆解析)とは、既存の製品やソフトウェアなどを分解・解析し、その構造や仕様を理解する行為を指します。技術的な理解や競合分析、新規開発に役立つ手法であり、特にIT分野や製造業で活用されます。

ただし、リバースエンジニアリングが常に合法というわけではなく、対象となる製品のライセンス条件や関連法令、契約内容に応じて適法性が判断されます。したがって、リバースエンジニアリングを行う際は法的リスクに留意する必要があります。

特許との関係

特許権は、特許発明を業として日本国内で実施(製造・使用・販売など)する権利です。特許文献は出願とともに公開されるため、他者がその技術にアクセスすること自体は合法です。

しかし、特許発明の技術的範囲に該当する行為を業として行うと、たとえ独自開発であっても特許侵害となる可能性があります。特に、クレームに記載されている範囲を避けて設計したつもりでも、"均等論" の観点から侵害と判断されることもあります。

そのため、特許技術を参考に新たな製品やサービスを開発する際には、専門家によるクレーム解析や侵害回避設計の検討が重要です。

著作権との関係

著作権は、創作的表現を保護する権利です。ソフトウェアのソースコードなどは著作物として保護され、無断複製や改変は著作権侵害となります。

一方で、著作物を単に読む・見るといった行為、あるいは創作的表現に直接触れない限り、著作権侵害とならないケースもあります。

ただし、技術的保護手段(DRMなど)を回避しての解析は、たとえ研究目的であっても著作権法違反となる場合があります。特にソフトウェア製品のリバースエンジニアリングは、著作権と密接に関係するため、慎重な判断が求められます。

不正競争防止法・契約上の注意点

製品に営業秘密が含まれている場合、これを不正に取得・利用・開示することは「不正競争行為」として法的責任を問われることがあります。営業秘密には、「秘密として管理されている」「有用な情報である」「非公知である」という3要件があります。

また、製品やソフトウェアの利用規約・契約書などにおいて、リバースエンジニアリングを禁止している場合があります。このような契約に反して解析を行うと、契約違反として民事責任を問われる可能性があります。

悪意あるリバースエンジニアリングから自社技術を守るには

技術法務解説
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解説:弁護士法人内田・鮫島法律事務所 代表弁護士/弁理士 鮫島正洋 氏

以上、リバースエンジニアリングの適法性について「リバースエンジニアリングをされる側」の立場で知財権との関係を解説しました。しかし、注意しなければならないのは、リバースエンジニアリングについては「される側」のみならず「する側」になることもあるということです。

研究開発のみならず、特許権の侵害調査などにおいても「リバースエンジニアリングをする」側に立つことは、企業活動において現実的な局面です。特に、ITサービスを対象にリバースエンジニアリングをする場合は、利用規約の解釈を含め、専門家による高度な法的判断が求められる領域です。

「される側」としての防御戦略と、「する側」としての適法性の担保。これら双方の視点に立った知財・法務戦略の構築が求められます。

このような多角的な視点を持つ専門家の知見を活用することが、事業の法的安定性を高めることに役立つはずです。

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リバースエンジニアリングの判例

リヴァース・エンジニアリングに対する著作権侵害に基づく損害賠償請求に関する判示

原告は被告が原告の著作物たるプログラムを無断で改変して別のプログラムを作成し、もとのプログラムにかかる原告の著作権を侵害したものと主張しました。そして不法行為(民法709条,719条)に基づく損害賠償請求を行い、被告が作成したプログラムが販売されたことによる侵害者利益を前提とした損害賠償の支払いを求めています。

判決

判決としては一審で請求棄却・二審で控訴棄却となりました。被告のプログラムは適切なパラメータ設定を探るためにのみ作成されたものであり、適切なパラメータ設定のためには実際にいくつかのパラメータを設定してプログラムを動作させる必要がありました。また、もとになったプログラムは原告が被告のアイデアを移植する形で作成したものであること、原告がプログラムを作成した時点においてはもとのソースコードが被告に開示されていたと考えられることなどから当該判決に至っています。

参照:平成22年4月27日判決(知財高裁 平成21年(ネ)第10070号)/平成21年10月15日判決(東京地裁 平成19年(ワ)第16747号)
出典:プログラムに関するリヴァース・エンジニアリングの可能性│知財弁護士.COM

発明の容易想到性と特許無効審判

本件は発明の名称を「エアバッグ用基布」とする特許の特許権者である被告が、原告から特許無効審判を請求された事件です。被告はこれに対して「訂正請求」をし、特許庁が「請求のとおり訂正を認める。本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をしたため、これに対して原告が審決の取り消しを求めて訴訟を提起しました。

判決

原告側としては既存製品からの「容易想到性」についての判断に誤りがあるとして主張をしていましたが、それぞれの発明に関係する要素が本件発明の技術的意義に基づいて設けられた数値範囲内にとどまるといえないことから、結局は本件発明の構成に至るとはいえず、本件発明の構成を容易に想到できるということはできないという判断になりました。

参照:平成28年11月16日(知財高裁 平成27年(行ケ)10206号)
出典:公然実施発明の特殊性に触れた審決に対し,これに触れなかった裁判例│知財弁護士.COM

営業秘密侵害への非公知性及び故意責任が認められなかった事例

被告人2名は、磁気センサの開発・製造及び販売等を行う株式会社の従業員であったが、同社の営業秘密を不正に開示したとして営業秘密侵害罪(役員等背任罪・不正競争防止法21条1項5号)で起訴されていました。

判決

本件では書面やメール、またはデータ提供といった記録が残るような形態ではなく、口頭やホワイトボードへの記載という形で行われた開示行為について営業秘密侵害罪で起訴されたという点が特徴的でした。さらに裁判所が営業秘密保有者側の営業秘密と被告人らが開示したと認定できる情報との相違点・共通点を炙り出すという手法で「非公知性」を否定したという点が珍しい判決であるといえます。さらに予備的に被告人両名の故意責任も否定しつつ、被告人両名が不正の利益を得る目的(図利加害目的)であったと認定し、仮に故意が認められたのであれば共謀も認められると判示した特異な事例です。

参照:令和4年3月18日(名古屋地裁 平成29年(ワ)第427号 不正競争防止法違反被告事件)
出典:被告人の図利加害目的を認定しつつ、非公知性及び故意責任が認められないとして無罪とした営業秘密侵害罪の事例│知財弁護士.COM
技術を守る、契約を攻める。これが技術法務です

スタートアップ企業にとって、知的財産は競争優位の源泉であり、事業成長に不可欠な資産です。悪意あるリバースエンジニアリングに対抗するには「技術のコア部分は特許取得や意匠登録などで積極的に保護する」「製品の利用規約やライセンス契約において、リバースエンジニアリングを明確に禁止する条項を設ける」などの対応が必要になります。

自社技術の模倣や流出のリスクを低減させるとともに、万が一の侵害行為に対しても迅速な対応をしていくには、個別の法律知識だけでなく、技術やビジネスの理解と一体化した戦略的な支援が不可欠です。

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