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自社のコア技術を守るには

このメディアは 弁護士法人内田・鮫島法律事務所をスポンサーとして、Zenken株式会社が運営しています。
目次
  • AIエンジン開発
  • コア技術
  • 共同開発研究
  • 大手メーカー
  • ライセンス
  • 自社技術の調査・分析
  • Win-Winとなれる関係

自社事業の中枢を担う技術である「コア技術」は、スタートアップにとって同業他社との差別化を図り、より優位に事業展開を進めるという意味において非常に重要なものです。

コア技術を保護する方法でまず考えられるのは「特許」として権利化することですが、その際に出願前の調査を怠ってはなりません。出願するか否か、自社技術のどの範囲を権利化すればよいか、万一自社のコア技術の中で既に権利化されているものがあればどのように対応すればよいかなどを、専門家と共に調査結果を踏まえた徹底検討をすることが望ましいといえます。

特に、共同開発研究においては、守るべきコア技術の見極めが大切になります。

以下では、弁護士法人内田・鮫島法律事務所が実施した「技術法務」の事例を紹介しています。

技術法務の事例:AIエンジンの開発スタートアップのケース

大手電機メーカーを共同開発先とせずに、部品メーカーを共同開発先とした事例です。

相談内容・課題

A社は、自社のコア技術であるAIエンジンの精度をより向上させたく、共同研究先を探しています。A社のAIエンジン性能は評判が良いため共同研究を希望する企業が多い中、A社は大手メーカーB社を共同研究の相手先として検討を始めました。

アドバイスのポイント

スタートアップであるA社は、売りであるコア技術を持ってはいますが、大手メーカーとの事業提携で、自社のAIエンジンの開発に役立つ様々な実験ができること、さらに会社として箔が付くことを期待し、B社と共同研究を進めたいと思っています。

しかし、A社の目的は共同研究の成果物となるであろう「さらに精度が向上したAIエンジン」を今後広く使用することであるところ、B社との提携では成果物の権利の帰属が問題になりそうです。

B社が通常の商習慣に則って、共同研究の成果物は共有とすべきことを主張してきたため、A社には自社の一存で他社に当該成果物のライセンスを許諾できない(特許法第73条3項)などの制約が課せられてしまいます。

さらに、今回事例の特殊事情ではありますが、B社もまたAIエンジンの開発を事業として行っていることがあげられます。A社の技術ノウハウが流出してB社事業に勝手に用いられたり、将来的にA社事業と競合するかもしれないというリスクは避けたいところです。

これらのリスクを勘案すると、共同研究先として第一希望であったB社は、A社が最も重要視する目的である「共同研究の成果物を広く自由に使用する」ことが叶う相手ではないという判断になりました。幸い共同研究を申し出た企業が複数存在したため、A社の上記目的に合うC社と話を進められることになりました。

C社は大手ではない部品メーカーであり、、できる実験には限りがあるかもしれませんが、AIエンジンの開発は行っていないこと、共同研究の成果物はA社の単独所有とすることを認め、その代わりに、C社を何らかの形で優遇させる条件で使用できればいいと考えていることが決め手となったのです。

共同研究は自社のコア技術の守るべき部分を守りつつ、将来的な事業展開が目指せ、かつ双方がWin-Winとなれる関係が築ける相手先を見つけることが重要です。そのためにはまず、専門家の協力を得て、自社技術を調査しその価値を正しく判断・分析することから始めましょう。

※上記の事例は、以下の書籍から抜粋、再構成して紹介しています。
『技術法務のススメ~事業戦略から考える知財・契約プラクティス』(日本加除出版株式会社)
弁護士法人内田・鮫島法律事務所の代表弁護士/弁理士鮫島正洋 編集代表
2022年7月第二版発行、pp.424~426参照

『技術法務のススメ』

監修者 解説

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解説:弁護士法人内田・鮫島法律事務所 代表弁護士/弁理士 鮫島正洋 氏

スタートアップが他社と共同研究を進める際、最も大切なのは「将来の事業展開が制限されないこと」です。有名な企業との提携は確かに魅力的ですが、その契約内容によっては、せっかくの成果を自由に使えなくなったり、技術流出のリスクを招く恐れがあります。そうなってしまっては、本末転倒です。

共同研究のパートナー選定においては、以下のようなポイントを意識することが大切です。

①決断スピードが早いこと

スタートアップは時間との勝負です。秘密保持契約(NDA)の締結だけで数カ月もかかるような相手先については、パートナーとしての適格性を慎重に判断すべきでしょう。

②お互いの企業価値を最大化しようとする姿勢があるかどうか

自社の主張ばかりを押し通そうとする相手とは、将来的にプロジェクトが立ち行かなくなる可能性が高いため注意が必要です。

③技術の課題解決だけでなく、社会課題の解決に視野を広げているかどうか

社会や産業に影響をもたらすイノベーションを「社会実装」まで見据えられるパートナーこそが共に長期的な成長を実現できるでしょう。

スタートアップにとって最適なパートナーとは、事業の目的や価値観を共有し、成果の活用について柔軟な協議が可能な相手と言えます。

そのため、プロジェクトの初期段階から専門家を関与させ、契約内容や相手企業の姿勢について客観的な評価を得ることが、コア技術を守りつつ事業を加速させるための確かな原動力となるでしょう。

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