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AI特許の取得方法

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AIを組み込んだシステムや、AIそのものに関する技術についての特許取得には、現行法上の明確な規定がありません。

なお、一般的なAI特許としては「AIそれ自体に関する技術(ニューラルネットワークの形成方法など)」と「AIの利用方法やシミュレーションの結果として得られた発明(AI応用発明)」の2通りがあります。

AI特許が認められる要件

発明であること

特許として認められるためには「発明」でなければいけません。特許法では発明を「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義しており、これに該当するものでなければ特許として認められません。

新規性

発明が特許として認められるためには客観的に新しいアイデアである必要があります。本人にとっては新しくとも、社会全体から見て新しくないものであれば特許として認められることはありません。

進歩性

新規性のある発明であればすべて認められるのかというとそうではありません。新規性があったとしても、従来の技術から見て特許を与えるに値する何らかの技術的な進歩性がなければ特許として認められることはありません。

記載要件

たとえばソフトウェアの発明であれば、そのアルゴリズムについて十分な説明を備えた出願でなければいけません。

AI発明においてはこのアルゴリズムを明確に説明することが難しいため、「入力データと出力データの間に論理的関係があると推測できるもの」であれば、記載要件を満たすと判断されることがあります。

AI特許とは

それでは「AI特許」とはどういったものを指すのでしょうか。ここでいうAI特許とは、「AIそのものに関する技術(ニューラルネットワークの形成方法など)」または「AIの利用方法やシミュレーションの結果として得られた発明(AI応用発明)」のいずれかと定義します。具体的には機械学習や深層学習のように特徴的なアルゴリズムを搭載しているAIそのものの発明が「AIコア発明」、AIを利用してシステムを発明する場合は「AI関連発明」として取り扱われます。

AI特許はリスクもある

内部ロジックを公開することになる

これはAI関連特許に限らずですが、特許出願を行うとその内容が公開されるため、内部ロジックを知られてしまうことになります。

しかしAIや機械学習の分野においては他の技術文化と比較するとリスクが低いとされています。
理由としては内部の演算ロジックなどは数年後には大きく改良・変更されるのが一般的とされているためです。

むしろ出願する側として出願内容と自社の技術内容が乖離しないよう注意しなければいけません。数年で新たな技術に置き換わることで、取得した特許が機能しなくなる恐れがあります。

技術法務の事例

A社はテレワークで課題となる従業員間のコミュニケーションを円滑にするため、表情などから感情を分析するシステムを開発。主力商品として新会社設立を検討していました。

独自に会社の従業員などの任意で提供された学習データを基盤とし、さらにM&Aで取り込んだ会社の動画解析技術を利用。感情分析は大学と共同で開発しています。

特許化における判断基準

技術法務解説
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技術法務解説
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解説:弁護士法人内田・鮫島法律事務所 代表弁護士/弁理士 鮫島正洋 氏

この事例でキーとなる技術は、人の表情から感情にかかる指標に変換するアルゴリズムとなります。このアルゴリズムについてはノウハウ的な要素も多く、このシステムに用いられるAIエンジンそのものは、侵害検出性が高くありません。そのため、ビジネスに資する特許の対象としては不向きであると判断されます。そういった観点から、特許出願によってこのシステムを詳細に開示することは、事業上のリスクを伴うと考えられます

したがって、アルゴリズムの概要について特許出願に記載しつつも、特許取得の主眼は、表情を判定するシステム及びそれに付随されるべき機能として特許化することに置き、リスクの軽減を図るアプローチが有効です。

このように、ノウハウとして秘匿すべき部分と、侵害検出性まで見据えた上で「ビジネスに資する」特許網を構築すること。これこそが、知財戦略の要諦と言えます。

最適な知財網の構築をするためには、知財実務に精通した専門家と共に検討を重ねることが望ましいでしょう。

▶運営会社情報

※上記の事例は、以下の書籍から抜粋、再構成して紹介しています。
『オープンイノベーション時代の技術法務~スタートアップの知財戦略とベストプラクティス』(日本加除出版株式会社)
弁護士法人内田・鮫島法律事務所の代表弁護士/弁理士鮫島正洋 編集代表
2024年6月28日初版発行、pp.205~223参照

『オープンイノベーション時代の技術法務』

まとめ

現行の特許法では明確にAI活用を想定した定めはありませんが、今後時代の流れに合わせて改正されるかもしれません。それと並行してどんどん技術発展も進んでいくことが予想されるため、常に新しい情報をアップデートしておきましょう。