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特許取得を検討している

このメディアは 弁護士法人内田・鮫島法律事務所をスポンサーとして、Zenken株式会社が運営しています。
目次
  • 宇宙スタートアップ
  • 特許出願
  • ライセンス契約
  • 方法の発明
  • 化学素材メーカー
  • 量産化
  • 大手メーカー
  • 共同研究開発契約

スタートアップ企業において知的財産をどのように扱うかは重要課題の一つです。

特許庁「スタートアップが直面する知的財産の課題に関する調査研究報告書」(令和3年度)では、アンケート回答企業(359社)のうち、創業期~成長拡大期に「知的財産の保護・活用の観点からの反省または失敗の経験がある」と答えた企業は約4割に上ったという結果が出ており、特に「特許等知的財産を出願すべきだった」など権利化に関する反省・失敗が多い傾向にあります。

しかし、特許はただ出願すればよいというものではありません。メリットとデメリットを理解した上で、出願の要否はもちろん、出願のタイミングや出願の範囲などにつき、事前調査を行い戦略を立てることが大切です。

参照元:【PDF】特許庁「スタートアップが直面する知的財産の課題に関する調査研究報告書」(令和3年度)
https://www.jpo.go.jp/resources/report/sonota/startup/document/index/startup_r3_hokoku_bunseki_02.pdf)

※特許庁が359 社(INITIALデータベース、IPAS、J-Startup 選定企業のリスト3,619 社のうちの有効回答数)に実施したアンケート結果(令和3年度)

以下では、弁護士法人内田・鮫島法律事務所が実施した「技術法務」の事例を紹介しています。

技術法務の事例1:宇宙スタートアップのケース

顧客の技術や事業の方向性を踏まえ、第三者との契約を見据えた契約条件や特許出願の要否等を検討・提案した事例です。

相談内容・課題

これまでの液体燃料より安全性が高くかつ環境にやさしい人工衛星の固形燃料を開発し、特許を取得したスタートアップA社は、その後更に開発を進めた結果、固形燃料の燃焼をコントロールする方法に関する新たな知見を得るに至りました。

折しも大手宇宙企業B社から協業の話があったことから、A社は現在の特許に加え、新たな知見でも特許を取得し、B社とライセンス契約をすることを考えています。

アドバイスのポイント

第三者へのライセンス契約を前提とした、「方法の発明」に関する特許出願をするか否かという相談です。

発明を第三者に開示する場合、一般的には開示前に特許出願をする方が、メリットが多いと考えられます。 理由として、適切なNDA(守秘義務契約)を締結しないで発明を開示すると新規性を喪失して特許取得できなくなるというリスクがあるほか、出願前に第三者とライセンスに関する交渉を行うと、当該発明の内容に触れた第三者がその技術を盗用する可能性もあります。特許出願しておけばこのような危険はなく、さらに特許取得できれば、相手方が同様の協業を他者と行えなくなるため、交渉を有利に進められることになります。

ただし、方法の発明のように侵害検出性が低い発明の場合は、出願の際の特許明細書に発明の課題解決に必要な要素のみを記載し、詳細な温度条件や寸法等のノウハウは記載しない方がよいでしょう。その方が、他者が摸倣しにくくなるからです。

技術法務の事例2:化学素材メーカーのケース

特許出願のサポートと、共同研究開発契約のレビューを有機的一体的に行った事例です。

相談内容・課題

スタートアップC社は、セラミックス材料に関する新製品を製造し、大手メーカーD社から新製品の量産化について、共同開発を打診されています。C社はD社との共同開発契約締結前に新製品の特許出願をしようと考えています。また、新製品に派生する技術についての特許出願の方法についても検討しています。

アドバイスのポイント

新製品につき第三者と共同開発をする場合、当該契約締結前に特許出願を行うことで、既にC社が保有する技術を明確にできるというメリットがあります。出願時の特許明細書には事例1と同様ノウハウを記載しないことが好ましいと考えられますが、この場合、当該ノウハウが契約締結前からC社の保有であったことを証明するため、公証制度を利用して確定日付を得ておくことが望ましいでしょう。

次に、派生技術については「発明の単一性の要件を充たす一群の発明(特許法37条)」であることを前提とすれば、新製品の技術とまとめて1件の出願にすることも別々に出願することもできます。1件の出願にまとめることのメリットは、何といってもコストや手続きの手間を削減できることで、管理も容易になります。また、複数の技術を組み合わせることで、より広い権利範囲で特許を取得できる可能性があります。
一方デメリットとしては、1件の出願にまとめることで、一部の技術に拒絶理由が発見された場合、他の技術もまとめて拒絶されるリスクがあります。複数の技術を無理に1件にまとめることで、個々の技術の権利範囲が狭くなる可能性があります。
どちらの戦略を選択すべきかは、個々のケースによって異なります

※上記の事例は、以下の書籍から抜粋、再構成して紹介しています。
『オープンイノベーション時代の技術法務~スタートアップの知財戦略とベストプラクティス』(日本加除出版株式会社)
弁護士法人内田・鮫島法律事務所の代表弁護士/弁理士 鮫島正洋 編集代表
2024年6月28日初版発行
事例1:pp.55~75、事例2:pp.99~118参照

『オープンイノベーション時代の技術法務』

監修者 解説

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解説:弁護士法人内田・鮫島法律事務所 代表弁護士/弁理士 鮫島正洋 氏

特許を出願するかどうかは、技術の特性や事業戦略によって慎重に判断すべき、経営上の重要なポイントです。

まず考慮すべき点は、「侵害の検出が可能かどうか」です。特許は出願すると内容が公開されるため、発明を知られるリスクが伴います。しかし、「物の発明」を中心に第三者が無断で使えば、特許権によりそれを止めることができます。

対して、発明の内容を使っているかどうかを外から確認できない「方法の発明」などでは、特許を出しても実際の侵害を把握できず、結果的に貴重なノウハウを公開しただけで終わってしまうおそれがあります。

次に、特許出願のコストに対してどれだけのメリットが見込めるかという、経営的な観点からの検討も重要です。

自社の技術力を証明したり、ライセンス契約で収益を得たり、競合の参入を防ぐことができるという特許取得のメリットは、事業の交渉力や市場での競争力の源にもなり得ます。

特許がもたらす効果と出願・維持にかかるコストを比較し、十分なリターンが見込めるかを客観的に評価することが求められます。「侵害検出性」という技術的側面と、「費用対効果」という事業的側面。この双方を考慮した判断プロセスこそが、事業に資する知財戦略の要諦と言えます。

そのため、専門家の多角的な視点を取り入れながら検討を進めることが、最適な意思決定を行うための一助となるでしょう。

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