特許のコストは、出願時点での1回で終わるものではありません。取得のための費用に加え、登録後も毎年の維持費用という負担が続きます。
とはいえ特許は、収益の確保だけでなく競合の参入抑止や取引先からの信頼確保など、間接的な価値も大きい権利です。どの技術についてどこまで投資するかを整理し、ビジネス戦略の一環として費用対効果を検討していくことが重要です。
特許を取得するためには、特許庁へ支払う公的な手数料に加えて、弁理士に手続きを依頼するための費用も発生します。
出願時に特許庁へ支払う手数料には、主に以下のものがあります。
特許庁の手数料に加え、弁理士に手続きを依頼する際には、一般的には以下のような費用が発生します。
弁理士費用や調査費用は、依頼する事務所や特許の対象となる技術分野、案件の難易度によって大きく変動します。これらの費用を合計すると、数十万円から100万円程度になることがあります。
特許を取得する際は、これら取得にかかるコストをあらかじめ試算した上で、その費用に見合うだけの権利範囲が確保できるのか、また、自社の事業計画に合致しているのかを総合的に検討することが重要です。
なお、特許庁の手数料額は改定される可能性があるため、実際に出願する前に特許庁のウェブサイトなどで最新の金額を確認してください。
特許権を有効に維持し続けるためには、特許登録後も毎年「特許料(年金)」を特許庁へ納付する必要があります。
年金は、特許権の経過年数と請求項の数に応じて金額が上がっていく仕組みです。具体的な年金額は以下の通りです。
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| 経過年数 | 毎年納付する基本額 | 請求項1項ごとの加算額 |
|---|---|---|
| 第1年分~第3年分 | 4,300円 | 300円 |
| 第4年分~第6年分 | 10,300円 | 800円 |
| 第7年分~第9年分 | 24,800円 | 1,900円 |
| 第10年分以降 | 59,400円 | 4,600円 |
多くの特許は出願日から20年で存続期間が満了しますが、長く維持するほど経済的な負担は重くなっていきます。そのため、実際の実施状況やライセンスの有無、競合との関係などを総合的に勘案して、更新し続ける特許を定期的に見直すことが重要です。
特許にかかる費用をなるべく抑えたいと考えている企業には、特許庁が提供している減免制度の活用が有効な選択肢となります。
2019年4月1日以降に審査請求を行った案件に適用される新しい減免制度では、申請手続きが大幅に簡略化されました。従来必要だった減免申請書や証明書類の提出が原則として不要となり、出願審査請求書や特許料納付書の「手数料に関する特記事項」欄に、減免を受ける旨などを記載するだけで申請できます。
審査請求料と第1年分から第10年分までの特許料が対象です。特許出願料や、11年目以降の特許料は対象外となります。
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| 対象区分 | 審査請求料の軽減率 | 第1年分~第10年分の特許料の軽減率 |
|---|---|---|
| 中小ベンチャー企業や小規模企業等 | 通常額の3分の1に軽減 | 通常額の3分の1に軽減 |
| 中小企業 | 通常額の2分の1に軽減 | 通常額の2分の1に軽減 |
| 法人税が課されていない中小企業 | 一定の要件を満たせば2分の1に軽減 | 一定の要件を満たせば2分の1に軽減 |
自社が該当する区分を早めに確認し、制度の利用を前提とした費用計画を立てておきましょう。特に、複数件の出願を予定している場合や長期の維持を見込んでいる案件では、減免制度の活用がコスト削減に大きく貢献します。
なお、制度の適用要件や軽減率の細かな違いは見直されることもあるので、必要に応じて特許庁のウェブサイトや弁護士・弁理士への相談を通じて最新情報を確認するようにしてください。
特許出願をすべきかどうかは経営判断であるため、どのようなケースでも「コストvsリターン」という枠組みで判断をします。
それでは特許取得によるリターンは何でしょうか?
最大のメリットは、他社からの妨害を排除し、安全に市場へ参入できる「市場参入のきっぷ」を手にすることです。それに加え、副次的に以下の4つの強力な効果が期待できます。
さらに近年では、スタートアップの出口戦略であるIPO(新規上場)においても、証券市場の審査項目として「知財戦略の有無や権利の確保状況」が見られるようになってきました。
この様に、特許のコストを経営判断する場合、それによって得られる法的な権利の強さとビジネスとしての強さを算出する必要があります。多角的な視点を持つ専門家の知見を活用することで、事業の安定性を高めることに役立つでしょう。