特許法とは、知的財産(無体財産ともいう)の一つである「特許」の利用・保護に関する取決めを条文化したものです。
人が研究、開発の結果生み出した新たな発明は技術の飛躍的進歩をもたらすため、そのためのインセンティブとして、発明者に何らかの権利を付与すべきである一方、産業の発達に寄与するためにはその利用を図る必要があります。その目的を達するため、特許法は、発明者に当該発明を独占的に実施する権利(特許権)を与え、それにかかる実施権を第三者に設定(いわゆるライセンス許諾)できるようにして利用を促すことで、双方のバランスを取っています。
特許法で保護される知的財産は「発明」です。特許法(以下「法」)第2条1項では発明を「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義しています。例えば、新たな鉱物を発見しても単なる「発見」ですが、その鉱物を研究して新たな化学物質を作れば「発明」になり得るのです。
発明には「物」の発明と「方法」の発明があります(法第2条3項)。この例の場合、新たな化学物質は「物」、化学物質の作り方は製造に関する「方法」の発明となります。ただし、これら発明は所定の出願手続を行い、審査に通って特許庁に登録されることで初めて保護の対象になります。出願は発明者または発明者から特許を受ける権利を譲り受けた者が行えます。
特許権者は、自身の特許発明を独占的に実施する権利を専有します(法68条)。すなわち発明品を作る、使う、譲渡するなどの行為は特許権者にしか認められません。特許権者は自身の事業展開のため独占して特許発明を実施したり、他者に実施権を与えて対価を得たりして当該発明を利用できます。また、特許権者は自身の特許が侵害された場合に、侵害者に対して侵害行為の差し止めや(法100条)損害賠償(民法709条)を請求することが認められています。
企業は会社の利益を追求することが目的ですから、研究開発を重ねた結果取得した特許は当然事業の発展に資するものでなければなりません。特許はライセンス許諾のロイヤリティーを得るという目に見える方法だけでなく、特にそれが必須特許(特定の製品を生産する際に実施しなければならない特許)であればさまざまに活用できます。
市場独占もその一つですが、例えば当該特許を必要とする企業と有利な方向で提携が進められるライセンス契約、相互に特許を必要とする企業同士が事業の自由を確保するために相互にライセンスを与えるクロスライセンス契約によりWin-Winの関係を築く、など実情に応じた利用も可能です。
企業によっては、自社の技術を特許出願せず、ノウハウとして秘匿するという戦略(ブラックボックス戦略)も考えられます。その場合であっても、ノウハウとして残すべき技術と権利化しておいた方がよい技術を専門的な目で分析し、かつノウハウとする部分は後に同様の技術が特許となった時に備えて、先使用権を主張できる証拠を揃えておくことが重要です。
なお、特許権には存続期間があり、原則として、出願の日から20年で終了します(法67条1項)。特許に関しあまり長期間に渡り特許権者の専有を認めることは、産業の発達を逆に阻害してしまいかねないからです。したがって特許権を所有していても安泰ではありません。企業の発展には継続して更なる技術開発を進めることが求められるのです。
大企業はもちろん、ベンチャー企業にとっても、特許は、自社の企業価値を高める材料になり得る重要なものです。しかし、企業は特許を取ることを目的とするのではなく、自社の研究成果にかかる技術を高めることで、結果として新たな発明につながることが理想です。そのためには付け焼刃でなく、長いスパンで特許に関する投資を行えることも重要になってきます。
特許法は、発明者に独占的な実施権を付与することで技術開発を促進し、同時にその活用を通じて産業の発展を目指す法律です。
発明を権利化することで、事業独占やライセンス契約、クロスライセンスなど多様なビジネス戦略が可能になります。一方で、ノウハウの秘匿や先使用権対策など、権利化しない戦略も存在します。
このように、特許法をはじめとする知的財産法の理解と、その実務への適用は企業活動に直結する重要なテーマであり、そのために特許戦略の立案から権利行使、契約交渉まで、法務と知財を横断的に扱う「技術法務」が求められています。
「技術法務」とは、知財と法務をボーダレスに駆使し、企業価値の向上を実現するための法務であり、弁護士法人内田・鮫島法律事務所の代表弁護士で弁理士資格も持つ、鮫島正洋氏が2004年に提唱した考え方です。
当事務所では、企業の成長ステージや技術特性に応じた特許戦略やノウハウ管理、知財契約、特許紛争対応など、多面的な支援を通じて、顧客の技術とビジネスを守り、強化する技術法務サービスを提供しています。